高齢化が進む神奈川県足柄上郡山北町で、フレイル予防の知識を生かして地域の活性化につなげようと「フレイル予防とまちづくり」と題した講演会が12月8日、開催されました。
講師には県理学療法士会副会長で、県内には3人しかいない「上級フレイルトレーナー」の資格を持つ露木昭彰さん(54)が招かれ「町の状態を知ることは、町づくりにも直結している。フレイル予防の思考過程を町づくりにも生かしてほしい」と呼び掛けました。
(フレイル予防について詳しく知りたい方はこちらから)
「自分の体を知ってフレイル予防を」
「フレイル」とは、病気ではなくても加齢とともに筋力や心身の活力が低下し、介護が必要になりやすい状態を指します。その予防には「栄養」「運動」「社会参加」の三つの要素をバランスよく取り入れることが大切で、中でも「社会参加」とフレイルの関連は高いとされています。
山北町の人口は9,440人で、人口に占める65歳以上の高齢者は約4割と高齢化が進んでいます。露木さんは、高齢者が増えると「要支援・要介護」の状態になる人も増加傾向になり、介護保険料が増額されてしまう現状などを紹介した上で「フレイル予防の活動は介護保険料を下げていこうというのが大きな目標」と話します。
一度介護が必要になると配偶者だけでなく、自身の子どもらの就労時間や収入にも影響が出かねないとして「介護保険を使うことで幸せになることは何もない」と強調。また、積極的にフレイル予防に取り組んでいる自治体では、介護保険料を下げた事例があることも紹介しました。
介護や介助が必要になる原因として「高齢による衰弱」「骨折・転倒」の割合が高いと指摘し、「『骨折・転倒』は不注意というのが多い。『高齢による衰弱』も普段の生活の中で予防できる。自分の体を知って予防するのが大事」と呼び掛けました。
予防のためには、普段から自分の姿を写真や動画で撮影してもらって姿勢をチェックする方法や、目をつぶった状態で片足立ちをどれくらい続けられるかを計る「閉眼片足立ち」を紹介しました。
「町の状態を知ることは、町づくりに直結」
露木さんは、このように自分の体の状態をチェックしてフレイル予防につなげることと、町づくりの考えには共通点があるとして「町を健康にしていくためには町の状態を知ることが重要。介護認定者数が増えていることや、空き家がどれだけできているか、商店街がどうなっているか、そういうことが分かれば『どうしようか』となる。山北町の現状を知ることは、町づくりにも直結している」と説明。
その上で、山北町の高齢者の特徴として地域活動に「ぜひ参加したい」「参加してもよい」と回答した人が半数近くを占めた調査結果を紹介し、「山北町の強みは、やる気がある高齢者が多いこと。そういう人たちをフレイル予防やボランティア活動につなげられれば町はもっとよくなる。これは専門家でなくてもできること」と住民参加による町づくりの重要性を強調しました。
講演会は、山北町生涯学習活動モデル事業の一環で、一般社団法人かながわ地域振興会の主催で開かれました。